7月20日は、6時半起床。
  
おそるおそる窓から外をうかがうと、大阪の街は昨日と変わらぬ雨の中。
  
  
外での待ちは厳しそうだな。
  
  
とりあえず荷物をまとめて、チェックアウトは8時半。
  
小さな傘に身を押し込み、徒歩5分の新大阪駅を目指す。
  
見知らぬ街での一夜が明けて、もう昨日ほどのプレッシャーは感じていない。
  
麻衣ちゃんとの出逢いは運命なんだから、絶対今日もうまくいく。
  
  
駅で公衆電話を見つけると、岐阜在住の友人宅へモーニングコール。
  
  決して麻衣ちゃんファンではないが、麻衣ちゃんの良さは認めているらしいK林朋丙。
  
昨年の11月には、まんがの森町田店に二人で麻衣ちゃんに逢いに行った。
  
なんか世の中って、不思議なものだなあ。
  
今日はまた、活躍してもらわねば。
  
  
名古屋まで特急券を買って、そこにいる新幹線に乗り込む。
  
ばっちり窓際の席をキープすると、半開きのブラインドから大阪の街を望む。
  
少しだけ、昨夜の麻衣ちゃんを思い出したあと、つぎへ向かって心を切り替える。
  
今日は名古屋だ。
  
麻衣ちゃんと、絶対に逢ってみせる!
  
  
9時23分、軽い衝撃を残して、「ひかり226号」東京行きは、新大阪駅をあとにした。 
  
  
  
「はじめて来たよー。大阪より右。」(またはじまった)
  
  
名古屋到着は、10時23分。
  
北改札を抜けてしばらくは構内の雑踏にたたずむ。
  
待ち合わせには、ちょっと早いな。
  
ぼくは軽く時計に目をやると、とりあえずは名古屋のクアトロを下見してくることにした。
  
  
名古屋クアトロは、名古屋駅から地下鉄で3つ、名城線矢場町駅隣接のパルコ8階に立地する。
  
案内図で建物の概観をつかむと、やるべきことは進入経路の確認。
  
8階に上がるにはエレベータが1箇所3基、非常階段が外にひとつ。
  
まさか8階まで階段で上がることはないと思うから、当然つかうのはこのエレベータ。
  
エレベータに乗るのは、何階からであろうか。
  
1階? B1? B2?
  
8階で降りるのを待つのが、もっとも確実そうだな。
  
入りの時刻は、7時開演でリハの時間など考えると、午後3時ごろか。
  
  
待ち合わせの時刻が近づいてきたので、用事のすんだぼくは、一旦名古屋駅に帰ることにした。
  
  
11時45分。
  
名古屋駅北改札前で、ぼくは一人、目の前をすぎ行く人達を眺めていた。
  
麻衣ちゃん、もう起きたかなあ。
  
ぼくがこうしてるときだって、麻衣ちゃんはぼくの知らないところで、今を生きているんだよね。
  
麻衣ちゃんと逢いたいなあ。
  
麻衣ちゃんとは24時間、ずっと二人でいたいのに。
  
  
そんなこんなでぼんやりと物思いにふけっていたぼくであったが、しばらくして不意に目の前に接近してくる、あやしい人影を見つけた。
  
  
  オヤジ登場(笑)。
  
こいつを見るのも卒業式以来だが、まあずいぶんと社会人の顔になったものだ。
  
しばらく世間話をする二人。
  
すぐにでも入り待ちしたい気持ちを押さえ、”ポーカーフェイス笑顔”をつくる、けなげなぼく(笑)。
  
  
  
  | ぼく: | じゃあ、ここにいてもしょうがないから行こうか。 | 
  
  業を煮やしたぼくの一言によって、二人は麻衣ちゃんの来るパルコへと移動することとなった。
  
  
パルコへの道のりは、もう2回目とあって乗り換えもスムーズ。
  
  よくわかってるじゃないの(笑)。
  
  
矢場町の駅からパルコに到着すると、ここでもう一度進入経路の確認。
  
  
  | 朋丙: | 外の非常階段は、途中に”お客様はここより上には上がらないでください”って書いてあってあやしいんだけど。 | 
  
  かなりの研究をしてくれたようだ(笑)。
  
  
  | 朋丙: | それを無視してもうちょっと上に行ったんだけど、階段にゴミが置いてあって上がれなかった。 | 
  
  それじゃあ、ローリー軍団と言えど階段はつかえないな。
  
  
  というわけで、ぼく達二人は、パルコ内のレストランで、名古屋名物のみそカツを食すことにした。
  
  
  | ぼく: | でもここ、”渋谷”とか書いてあるよ(笑)。 | 
  
  入り待ちは食欲が満足された午後1時半から。
  
8階のエレベータ前のホールで、ひたすら麻衣ちゃんを待つことにする。
  
クアトロの入口から、いちばん近い右のエレベータまで約5メートル。
  
二人の座り位置から両者までは、約15メートル。
  
  
  | ぼく: | あそこから出てさっと入られたら、手が出せないねえ。 | 
  
  このエレベータから現れる確信はないし、今日だめでも明日があるから。
  
そんな合理化する自分が、ひどく嫌いだ。
  
  
2時半ごろ、弁当らしい包みが会場内に搬入。
  
  数えるなよ(笑)。
  
  
  | ぼく: | もうすぐ来るってことか、もう来てるってことか。 | 
  
  がらんとしたホールは、一辺にエレベータが3基、一辺にクラブクアトロ、一辺がプラネタリウム。
  
7階のタワーレコードからは、ラップミュージックが遠く聞こえてくる。
  
逢える確信がないだけに、待つのはむなしいなあ。
  
  
そんな間にも、会場内では今日の準備が着々と進んでいるようだ。
  
場内のサウンドチェックの音が、しばしば洩れ出てくるようになり、ぼく達が待つこのホールにも、スタッフの忙しい声が響くようになった。
  
  
そして午後3時。
  
いちばん右のエレベータの扉が開くと、金の長髪の男性がさっと会場内に入っていった。
  
  
  
  すっぴんのローリーを見るのははじめてなので、いまいち自信がないぼく。
  
  ちょっと希望が出てきたか。
  
  
  | ぼく: | でもあんなんじゃ、声かける間がないからなあ。 | 
  
  ぼくは黒いバッグを開けると、麻衣ちゃんに渡したいプレゼントを、すぐ取り出せる位置まで引き出した。
  
バッグの外にまで出さないのは、やはり渡せる自信がないから。
  
今日だめでも明日があるから…。
  
  
直後だった。
  
やはりいちばん右のエレベータの扉が開くと、金の長髪の男性が3人。
  
ローリーバンドだ!
  
そしてその間にはさまれ、ひかえめな顔で歩いている女の子。
  
はきなれた感じのジーンズに、ソニーミュージック支給の紺のTシャツ。髪は昔のゆりゆりみたくふたつに束ねられている。
  
スタッフか?(まじで思った)
  
彼等は入口で待ち構える係員に軽く会釈をすると、やはりまわりも見ずにさっと会場内へ消えてしまった。
  
  
  
  ん?
  
麻衣ちゃんなのか? 麻衣ちゃんだったのか?
  
結局わからないまま、ぼくはカバンからはみだしたプレゼントに、そっと手をやるだけだった。
  
  
いくらかの時間が過ぎた。
  
やっぱり麻衣ちゃんとは、逢えないのかなあ。
  
  
  | ぼく: | プレゼントって、スタッフの人に渡したほうがいいのかなあ。 | 
  
  目の前であたふたと仕事をしているスタッフを眺めて、ぼくは弱気につぶやいた。
  
  
  
  もう麻衣ちゃんに手渡すのはあきらめよう。
  
どうせ麻衣ちゃんに届けば、同じことだと思うから。
  
そうしてスタッフに預けようと一旦立ち上がったぼくであったが、やはり弱気なためスタッフにも手渡せない(笑)。
  
  
  なんかもうあきらめムード。
  
結局、なにもできないのかなあ。情けない。
  
会場前ではCDを売る机などがセットされ、次第に準備も整ってきた模様。
  
  そんな状況に転機が訪れたのは、時計の針がもう4時に近づいたときだった。
  
クアトロの厚い扉が開いて、中からローリーバンドのメンバー4人がふらっと外に出てくると、すぐぼく達の10メートル先で、下りエレベータを待ちはじめたのだ。
  
  まだホールにはぼく達を除いてファンの姿はなく、彼等はいかにも無防備に世間話を繰り広げている。
  
  出てきてほしい。
  
麻衣ちゃん、このプレゼントは、やっぱりキミに手渡ししたいんだ!
  
到着したエレベータに乗り込む彼等の背中を見つめながら、ぼくは麻衣ちゃんとの5ヶ月ぶりの再開を心に誓った。
  
  
麻衣ちゃん、出てきてほしい。
  
今キミに逢わないと、もう永遠に逢えないような気がする。
  
大宮から5ヶ月間、いつだってぼくはキミだけを想ってきた。
  
キミのいない明日なんて、もうぼくはほしくはない。
  
キミと逢えなかった日々が無駄ではなかったことを、今、ここで確かめたい。
  
  
窓の外では雨が次第に強さを増し、1階下のタワーレコードのBGMは、いつしか悲しいラヴ・バラードに変わっていた。
  
麻衣ちゃん、どうしてもキミに逢いたいよ。
  
ほんの一秒見つめあうだけで、今までの二人は間違っていなかったことに気づくはず。
  
二人すれ違い続けた時間のぶんだけ、きっとわかりあえるはずだから。
  
  
ぼくはカバンから取り出した麻衣ちゃんへのプレゼントを強く握り締めると、祈るような気持ちで二人を隔てる厚い扉を見つめていた。
  
  
麻衣ちゃん…。
  
 
  
 
  
 
  
時は何事も振り返らず、ひとつの終わりへと続く。
  
  
名古屋クアトロの厚い扉。
  
ひたすら見つめるぼくに、待ち受ける運命は何だろう。
  
  
麻衣ちゃん、出てきてほしい。
  
キミがいなかったこの5ヶ月、どんなにつらい夜をすごしたことか。
  
出逢うために生まれた二人。愛するために生まれた二人。
  
キミのいない瞬間(とき)なんて、ぼくはもうほしくはない!
  
  
ぼくは左腕の時計を、長袖のシャツの下に隠した。
  
着実に進み続ける時間から、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
  
もう限界だろうか。
  
麻衣ちゃんとは、今日もやっぱり逢えないのか。
  
  
その時だった。
  
息をひそめて立ちすくんでいた厚い扉が、軽いきしみを残して小さく口を開ける。
  
その間からは、傷んだ茶髪のおねえさん風の女性、そしてさっきのTシャツの少女が。
  
  
祈りが届いたか!
  
二人はぼくの視界をさっと横切ると、すぐに白い柱の陰に身を隠してしまう。
  
一瞬だったが、あのTシャツの少女。
  
麻衣ちゃんか? 麻衣ちゃんなのか?
  
背格好は麻衣ちゃん。でも少し、若すぎる感じもする。
  
ぼくは、頭の中で今のシーンを何度もリプレイしてみた。
  
麻衣ちゃん、のように見える。
  
でももうひとつの自信がない。動き出せない。情けない!
  
  
柱の死角に見えない二人。
  
彼女らはそこで、下りのエレベータを待っている様子だ。
  
傷んだ茶髪、あれはどこから見てもマネージャーだろう。
  
だとすると、あのTシャツの少女はやっぱり麻衣ちゃん?
  
麻衣ちゃんなのか? 本当に麻衣ちゃんなのか?
  
ぼくは、高鳴る心臓の鼓動を隠しきれずにいた。
  
二人を遮るように立つ、白い大きな円柱。
  
あー、なんであんなところに柱が立っているんだよ!
  
エレベータが到着するまでのわずかな時間。
  
気持ちがあせる。なにか手掛かりはないのか!
  
  
その時、傷んだ茶髪のおねえさん風の女性が、そこにあるプラネタリウムをさして、なにかTシャツの少女に話しかけたみたいだった。
  
  
  聴き覚えのある透き通った声。麻衣ちゃんだ!
  
  
  返事は待っていなかった。
  
ぼくはあわててその場から立ち上がると、プレゼントの包みを抱え、小走りに声のした柱の陰を目指した。
  
チンッ。
  
エレベータが8階に到着する音。
  
間に合うか!
  
  
のぞきこんだ柱の陰に、ぼくは少女の背中を見つけた。
  
あー、なんて呼び止めればいいんだろう。
  
5か月ぶりの再会に、気の効いた言葉が浮かばない!
  
  動転するぼく!
  
愛する人を目前にして、どうして言葉が出てこないんだ!
  
  しっかりするんだ!
  
  えっ!?という顔をして、Tシャツの少女は振り返る。
  
5か月ぶりに見つめた、キミのきれいに澄んだ瞳。
  
もうその輝きだけで、キミがキミだとわかったよ。
  
久しぶりだね、麻衣ちゃん。
  
  
  おそるおそるプレゼントを差し出すぼく。
  
べつに名前が書いてあるわけじゃないが、そこにはパープルのボールペンで、「to八木田麻衣嬢」。
  
  見覚えのあるその文字に、一瞬目が点になったあと一気にあせり出す麻衣ちゃん(笑)。
  
  言葉を失う麻衣ちゃん。なんとも言えない表情を浮かべる。
  
彼女の視線は、ぼくの顔とプレゼントとを交互に見較べている。
  
  さらにプレゼントを差し出すぼく。
  
わけもわからず手を出す麻衣ちゃん。
  
あわてふためく様子がいかにも少女でかわいらしい。
  
  お礼も言えずにプレゼントを受け取ってしまう麻衣ちゃん(笑)。
  
  
  視線が定まらないまま、とまどった笑顔を見せる麻衣ちゃん。
  
  
  もはやまともな言葉が喋れない(笑)。
  
  その間に、麻衣ちゃんをおいてさっさとエレベータに乗り込んだマネージャー嬢、なにを思ったか、その扉を閉めようとしているではないか!
  
非情!(笑)
  
  今にも閉まらんとする扉に気づく麻衣ちゃん!
  
  両手にプレゼントを抱えたまま、左足を軸に右足を飛ばす麻衣ちゃん。
  
閉まりかけた扉の下から70cm地点を、必死になっておさえている(笑)。
  
隣で苦笑して見守るぼく。
  
こんな特別な二人には、けっこう似合いのドラマかも。
  
  
麻衣ちゃん、まだまだ若いねー!
  
麻衣ちゃんのはしゃいでる姿を見るのも、ほんと久しぶりだなー。
  
麻衣ちゃんて夏になると、なんだか若返るみたいだね。
  
本当に不思議な人だなあ。
  
麻衣ちゃんと一緒にいると、なんかこっちまで楽しくなってしまう。
  
きっと、それが麻衣ちゃんの力なんだよね。
  
さすがだね、麻衣ちゃん。
  
素敵じゃん、麻衣ちゃん。
  
  
もう一度開いた扉から、あわててエレベータの中に逃げ込む麻衣ちゃん。
  
ぼくは麻衣ちゃんが見えなくなるまで、ずっとその場で微笑んでいた。
  
  
  
  落ち着いて一部始終を見ていた朋丙が、まず最初に口をひらいた。
  
  
  | ぼく: | いや、わからなかったけどさ(笑)。もういちかばちか。ただ声を聴いてね、そうかなと思った。 | 
  
  
  
  | 朋丙: | それにしても行動力があるのかないのかわからないねー。 | 
  
  
  
  
  | 朋丙: | 「あれヤギマイ?」とか聞いといて、俺に聞かれたってわかるわけないじゃん。 | 
  
  
  
  あー、ほんとに優しい気持ちになれたな。
  
5か月ぶりに見つめた、麻衣ちゃんのあの目。
  
変わってないね。すごく透き通っていて、いつも吸い込まれそうになる。
  
やっぱり麻衣ちゃんは、ほかの人と全然違うなあ。
  
麻衣ちゃんと逢えるということが、こんなに素晴らしいことだなんて!
  
  
  
  
  | 朋丙: | その前にスタッフに渡さなくてよかったよねえ。 | 
  
  | ぼく: | そうだなあ。なんか麻衣ちゃんとは、運命を感じているんだけど。 | 
  
  
  
  | 朋丙: | (笑)ここで待ってたら、戻ってくるかなあ。 | 
  
  
  
  | ぼく: | あ、そうだね。でも一度逢えたから、今日はこれで満足。 | 
  
  東京からこんな離れた旅先の地で、麻衣ちゃんと出逢い、見つめあったこの幸せ。
  
こんな奇跡があるのなら、ぼくはこの人生を、もう二度と憎まない。
  
麻衣ちゃんと出逢うことができて本当によかった。
  
今日のステージは、声をかぎりに応援するからね!
  
  
ところが今日の運命の女神は、これだけではまだ物足りないみたいだった。
  
ぼくがいまだ麻衣ちゃんの感触を引きずりながら、時の流れに身をまかせていた午後4時半すぎ。
  
朋丙が、無表情のままぼそっとつぶやく。
  
  
  | 朋丙: | ヤギマイ帰りはすぐそこのエスカレータから上がってきてさあ、今あの柱の陰にいるんだけど。 | 
  
  
  
  彼が指さしたのは、またしてもさっきの白い柱。
  
麻衣ちゃん?
  
  柱の陰から、ふっと姿を現す麻衣ちゃんとマネージャー嬢。
  
またしてもあわてて立ち上がるぼく(笑)。
  
今にも厚い扉の向こうに消えようとする麻衣ちゃんを呼び止めようと、大走りで(笑)彼女の背中を追いかける。
  
麻衣ちゃん、て呼ぶんだ。今日のステージを目前にした麻衣ちゃんに、優しい言葉をかけてあげたい!
  
  
麻衣ちゃんの後方2メートルで立ち止まり、意を決して声をかけるぼく。
  
  違う! こんな呼び止め方をしようと思ってたんじゃない!
  
なんで「麻衣ちゃん」て呼んであげられないんだよ!
  
同じく立ち止まって顔だけ振り向く麻衣ちゃん。
  
  違う!! こんなことを言いたいわけじゃないのに!!
  
ここで言わなきゃいけないのは、励ましの言葉じゃなかったのか!!
  
半回転して、まっすぐこちらに向き直る麻衣ちゃん。
  
  真面目な顔で頭を下げる。
  
違うんだってば! そんな反応を期待していたんじゃないのに!!!
  
  あー、なんてばかなことを言ってしまうんだよー!!!!
  
  
もう一度頭を下げて扉の中へ消えていく麻衣ちゃん。
  
なんで素直になれないんだよ。なんでもっと優しくなれないのさ。
  
こんなに麻衣ちゃんのことを愛しているのに、なんで言葉が出てこないんだ。
  
麻衣ちゃんと話したいのは、もっと全然べつのことなのに。
  
麻衣ちゃん、ごめんね。そんなつもりじゃないんだから。
  
誤解しないで、ぼくの気持ちに気づいてよ。
  
  
しばらく自分を責め続ける、ふがいないぼくであった(笑)。
  
  
しかし(笑)。
  
  
  
  
  
  
  
  
  | ぼく: | や、これ以上逢うと話がこじれそうだし。明日もまた逢えるしね。 | 
  
  そうだよ。明日も逢えるんだ。明日も、あの麻衣ちゃんと逢えるんだ!
  
なんか幸せな表情をするぼく(笑)。
  
  
  | ぼく: | それにしても町田店のときとか、朋丙と来ると新しい動きがあるよねえ。 | 
  
  
  
  | 朋丙: | あのときは、はじめてヤギマイと話したんだっけ? | 
  
  
  
  | ぼく: | そう。あれから8ヶ月、ずいぶん深入りしたなあ(笑)。 | 
  
  当日券発売の5時が近づくにつれ、次第にローリーファンの女の子たちも、このロビーにちらほら姿を見せるようになったてきた。
  
  勧誘するぼく(笑)。
  
  
  
  | ぼく: | いや、でも一人で”HYU!”とかやってたら恥ずかしいじゃん(笑)。 | 
  
  
  
  
  | ぼく: | 朋丙にまでやれとは言わないけどさあ、隣にいてくれれば…2000円出すから。 | 
  
  交渉開始(笑)。
  
  
午後5時ちょうど。
  
さっき麻衣ちゃんが消えていった厚い扉の向こうから、聞き覚えのある歌声がもれてくる。
  
  久しぶりの新曲をのびのびと歌う麻衣ちゃん。なんか今、すごく優しい気持ちでキミの声を聴くことができる。
  
やっぱり二人、出逢えたからだね。
  
ただ想い続けた5ヶ月から、新しい明日がはじまるんだ。
  
  
  | 朋丙: | 3000円出してくれるんなら入ってもいいよ。 | 
  
  よっしゃあ(笑)。
  
  
いまいちやる気のなさそうなローリー女がやっと集結をはじめたのは、開場時刻も迫った午後6時少し前から。
  
パルコ8階の階段から、思い思いに髪を染めた女どもが、階下へ向かってずらっと整列する。
  
こわい!(笑)
  
どう見ても別系統の観客達に、ちょっと恐れるぼく&朋丙(笑)。
  
  
6時入場。
  
列に並ぶのがいやだと、いまだ定位置から動かないぼく達。
  
  
  | ぼく: | これカメラチェックされるの? いやだなあ。 | 
  
  生活用品全般が入った黒いバッグを、うらめしそうに見つめるぼく(笑)。
  
  
  | ぼく: | これ下まであさられたらさあ、洗濯物とか出てくるよ(笑)。 | 
  
  
  
  しかたがないので列の最後尾につくぼく。
  
入口で係員の目が光る。こうなりゃ先制攻撃だ。
  
バッグの口をあけると、おもむろに係員の足元に放り出すぼく(笑)。
  
  
  
  
  係員の目が、なんとなくいちばん上に置かれた「JR時刻表」のあたりをさまよっているのがわかる(笑)。
  
  
  あっさりと通過。この手は今後もつかえそうだ(笑)。
  
  
そんなことで入場した、名古屋クラブクアトロ。
  
場内は意外とガラガラで、ぼくと朋丙はあっさりとやや右翼の4列目あたりをキープ。
  
  
  
  | ぼく: | ここだったら、”HYU!”のやりがいがあるかなあ(笑)。 | 
  
  とりあえず歌詞カードを見ながら、予行をするぼく達(笑)。
  
  
  | ぼく: | でも、麻衣ちゃんと逢えて本当によかったよ。ほっとした。これで楽に観ることができるよね。 | 
  
  
  
  
  
  | 朋丙: | それじゃあまた。お盆には東京に行くと思うけど。 | 
  
  JR名古屋駅。心地よい疲れを感じながら、夜の風に身をまかせるぼくがいる。
  
  
  
  | ぼく: | あ、麻衣ちゃんが最終ののぞみで帰るだろうことはわかってるけど、また話がややこしくなるからさ(笑)。 | 
  
  
  
  2秒の沈黙。
  
  
  
  
  ぼくと朋丙は軽く手を上げると、名古屋駅の雑踏を反対方向へと歩き出す。
  
知らない街の言葉の中で、今暖かい気持ちを感じながら。
  
  
新幹線のプラットホームから、名古屋の街の夜景を見つめる。
  
今日キミと出逢った名古屋の街。
  
明日からはまた東京の街で、ぼくら二人の新しい暮らしがはじまる。
  
  
麻衣ちゃん。
  
逢えない夜が続いたけど、やっぱりぼくらは二人だったんだね。
  
キミに逢わずに悩み続けた5ヶ月が、今はなんだか恥ずかしい。
  
ぼくにはキミしかいないんだし、キミにもぼくしかいないはず。
  
きっとキミと二人ならば、どんな壁でも超えていけるよ。
  
明日さえ見えなくても、光る星を目印に。
  
 
  
 
  
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   Yagimai Wonderland!!
  
  Copyright (C) 1995-2010 nozomi osano All rights reserved.
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