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  | ■Yagimai Wonderland!!/八木田麻衣スケジュール 八木田麻衣 「春のオールスターゲルゲの祭典・ゲルゲ大バーゲンセール」 ニッポン放送イベント
 1996年3月23日(土) 銀座ソミドホール
 
 昨日(3月23日)は麻衣ちゃんが『ゲルゲットショッキングセンター』のイベントに出演するということで、銀座はソニービルまで行って麻衣りました。
 説明しますね。
 『ゲルゲット』はニッポン放送で夜な夜なやっているよーわからん番組で、麻衣ちゃんはたびたび出ては、街で見つけた面白グッズをリスナーにプレゼントしています。
 で、昨日は番組初のイベント、とのことだったのですが。
 
 13時開始、ということでその少し前にソニービルに到着したぼくでしたが、すでに1階のロビーは大勢の人でごったがえしていました。
 うーん、年齢層が…低い!
 中高生を中心に、中には小学生の姿も見受けられます。最近の子供はあんなラジオ聴いて、夜更かしだなあ。
 第1回 13:30〜 ゲスト:Melody・八木田麻衣 他
 1時半になったら、麻衣ちゃんに逢える逢える逢える。
 ぼくは1時をさす腕時計にちらっと目をやると、心臓の鼓動を感じながら、しばらく人ごみの中に立ち尽くしておりました。
 うーん、こんな若々しい人達(笑)に囲まれていると、自分が歳をとったように思えてくるな。
 麻衣ちゃんと逢うのも久しぶりだから、なんかあるといいんだけど。
 麻衣ちゃんとの出逢いを想像しながら、時の流れに身をまかせるぼくでした。
 
 が。
 そういえば、ぼくのまわりを取り囲む大きな群衆。手に小さなピンクの紙切れを持っている人がいます。
 漠然とした不安感…。
 整理券、やはり出ているのだろうか。
 ぼくは一人ロビーの人ごみを抜け出すと、様子を伺うために遅いエレベータで8階ソミドホールへと向かったのでした。
 
 
 はあ。
 1階に戻ったぼくは、窓の外の雑踏を横目で見やりました。
 やはり朝から来るべきだったなー。
 午前中用事があったことは確かなんだけど、でも自分にとっていちばん大切なのは、いつだって麻衣ちゃんだったんじゃなかったのか?
 なんでこんなことになってしまったんだろう。
 「麻衣ちゃんのためならば…」、ほんの50日前に彼女にかけた言葉、あれは嘘だったのだろうか。
 
 なんでも麻衣ちゃんの前に、Melodyのミニ・ライブがある模様。
 かなうわけないよねー。Melodyファンがこんなに来てるのにさ。
 なんか、すごい無力。
 麻衣ちゃん。
 すぐそこにいるのに、逢えないこの辛さ。
 雪の大宮店以来離ればなれの二人。そろそろ、逢ってお話がしたいのに。
 
 くやしい。
 今同じビルの8階には、憧れの麻衣ちゃんがいる。
 それなのに、なんで逢えないの。
 こんなに好きなのに。
 こんなに、麻衣ちゃんのことを愛してるのに。
 
 1時半開演。
 ロビーに置かれたのモニタには、8階ソミドホールの様子が映し出されます。
 もう帰ろうか…。
 すでにヤケクソになっているぼくです。
 だって、こんなの辛すぎるよ。麻衣ちゃんとこんなに近くにいるのに、逢うことさえできないなんて。
 
 モニタの向こう。今、Melodyのミニ・ライブが終わったところです。
 
  
  | 司会: | では、次なるゲストを紹介しましょう。八木田麻衣です! |  
  
  | 麻衣: | うん。今そこで待ってたら、”その格好で出るの?”とか言われちゃった(笑)。 |  
  
  | 麻衣: | はい。これ、きたないけど、帽子。香港行ったとき買ったの。結構思い出があるんだけど、まいっか、あげちゃおうみたいな。 |  
  
  | 麻衣: | うーん、1000円ぐらいで買ったから、300円! |  
  
  | 司会: | (笑)でも、いいやつだよね。じゃあそちらのほうの値段は。 |  
  パラパラパラ。
  | 司会: | じゃあ1300円で、八木田麻衣の帽子と香水を買いたいっていう人! |  
  勝ち残ったのは、全身アディダスにオヤジ帽をかぶった男。
  | 司会: | はい。じゃあゲルゲじゃんけんで勝負をつけます! |  
  
  | 司会: | はい。八木田麻衣の帽子と香水は、1300円で彼の手に渡ります! |  
  
  | 麻衣: | ひどーい。嘘でもファンって言うものよー(笑)。 |  
  男はいかにもどうでもよさそうに麻衣ちゃんと握手をすると、帽子と香水を抱えそそくさとステージを下り、そして群衆の中に消えていきました。
  | 司会: | ファンじゃなくても握手ぐらいしときなさい。 |  
 …取り返そう。
 許せなかった。
 香水はともかくとして、麻衣ちゃんの思い出がいっぱいにつまった帽子が、よりによってあんなファンでも何でもない男の手に渡るなんて。
 あの帽子の価値がわかるのは、麻衣ちゃんと心を通わせたファンだけだ。
 麻衣ちゃんの思い出は、ぼくが絶対に守ってみせる!
 
 思い立つと行動の早いぼくです。
 イベントが終了に近づくと、ぼくは8階に続く階段を全速力で駆け上がりました。もう心がはやって、エレベータなんかに乗ってられなかったのです。
 8階ソミドホールの前は、退場する観客と整理する係員とで、この世のものとは思えないほどにごったがえしていました。
 アディダス、それにオヤジ帽。
 見つかるのか、こんなところで。
 ぼくは人波にまぎれて薄暗い会場に入ると、必死の思いでターゲットを探しました。
 いない。
 ぼくは再び人波をかきわけると、ホールを飛びだしました。
 まずい、もう帰ってやがる。急がなきゃ。
 
 エレベータを待つ人々の間を縫って階段へ向かうぼく。
 走りながら、今にも扉が閉まろうとしているエレベータの中をちらっと覗きました。
 ああっ!!
 いやがった。
 白いアディダスにオヤジ帽。手にはしっかり、あの麻衣ちゃんの帽子を持っています!
  
  ぼくはあわてて、そいつをエレベータから引きずり出しました。
  
  ぼくは切れた息を整えました。
  
  単刀直入です。遊んでるヒマはない。
  
  
  
  やった…! ぼくは心の中で軽く手をたたきました。
 でもここで気は抜けない。最後までうまく締めなきゃあ。
  
  
  
  
  
  
  
  ぼくは、すぐにでも帽子を奪い取りたい気持ちをおさえて、財布から1万円札を取り出し、まっすぐにそいつに差し出しました。
 よくやったな。ぼくは自分を褒めました。
 心の中は、麻衣ちゃんの思い出を守った満足感でいっぱいでした。
 何度も頭を下げてそいつを見送ると、ぼくは自分の手の中にある白い帽子を見つめました。
 麻衣ちゃんの帽子。
 TPDのキャンペーンで訪れた香港で、麻衣ちゃんが選んだGUESSの帽子。麻衣ちゃんと一緒に日本に帰ってきて、それから2年間、麻衣ちゃんが大事にかぶっていた帽子。
 きっとこのよごれの一つひとつに、麻衣ちゃんのたいせつな思い出がしまってあるんだろうな。
 いとおしいな、麻衣ちゃん。
 
 ぼくは控えめに手の中におさまった、帽子の感触を確かめました。
 やわらかな手触りから、麻衣ちゃんの思い出が、そして麻衣ちゃんが、ぼくの胸の中に伝わってくるようでした。
 麻衣ちゃんの大切な思い出、それを共有できるのは、世界中でぼくひとり。
 だからこの帽子は、あんな男に渡せない。麻衣ちゃんも、きっとぼくに受け取ってほしかったはずだ。
 麻衣ちゃん、たとえ逢えなくても、ぼくはいつでもキミのそばにいるよ。
 キミには何も不安はない。だからこれからも、自由に大空をはばたいておいで。
 
 麻衣ちゃんの帽子。麻衣ちゃんの大切な、白いGUESSの帽子。
 んー、いいにおい(笑)。
 
 
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